2013年7月29日月曜日

ノーベル殺人事件/アンチュ・トラウェ

WOWOWのジャパン・プレミアにて放映され、DVDも来月発売予定。スウェーデン版「ミレニアム」三部作のスタッフが送る、ベストセラー・シリーズ映像化作品第2弾。制作は「ミレニアム」シリーズのイエローバード。テレビやビデオ作品が中心のプロダクションのようで、『刑事ヴァランダー』なども手がけるイエローバードは、この「アニカ・ベングッソン」シリーズ(作者は、ジャーナリスト出身でベストセラー作家のリサ・マークルンド)8作中6作の権利を取得し、映像化(残り2作は既に他所で映像化済みの模様)。同シリーズ6作目を原作とする『ノーベル殺人事件』(原題は「Nobels testamente(英題:Nobel's Last Will)」)を2012年3月に劇場公開した後は、他のシリーズ作品を同年の7月から8月にかけて連続でソフトを発売したみたい。(つまり、一作目で様子見の結果、ビデオスルーが決定したということ?それとも一作目の劇場公開はプロモーション?) そうした背景からもわかるように、「新聞記者アニカ・ベングッソンの事件簿」的2時間ドラマなつくり。

「ミレニアム」三部作は、リスベットの強烈なキャラクター(及び演じたノオミ・ラパスの存在感)や主人公とのケミストリー、そして背後に張り巡らされた陰惨胡散な伝統と巨大システム化した現代社会の諸相がもつ醜態性、それらの絶妙なブレンドが安っぽい「大河」感を結果的に演出した幸運なシリーズだったように思う。批評興行共に優秀だったシリーズだが、個人的には正直ヴォリュームたっぷりの(だから見応えはある)堅実映像化作品程度だった。一応、一作目だけは原作を読み、作者スティーグ・ラーソンの数奇な運命も手伝ってか、見事にハマった小説だったことも影響してるかも。(ちなみに、フィンチャー版は大好きです。)

そして、本作も予想通りの出来。ドラマシリーズのパイロット版として吹替で気軽に観るならそこそこ楽しめるかなレベルの仕上がり。タイトルにもなっている「ノーベルの遺志」など(原作では掘り下げがあるのかもしれないが)この「テレビドラマ」版では火サス「断崖上の告白」程度すらも機能しない。小説だと違うのかもしれないが、とにかく主人公のアニカ・ベングッソンにさしたる魅力を見出せない。演じるマリク・クレピン(Malin Crépin)もパッとしない。が、スナイパー役のアンチュ・トラウェ(Antje Traue)にワクワク魅惑!ドイツ出身の彼女は、ポール・W・S・アンダーソン製作(確かに、アンチュはミラ・ジョヴォビッチ系だし)の『パンドラム』で世界デビュー、続いてレニー・ハーリンの『5デイズ』に出演。ここまでは先行不安というか心配なフィルモだったのだが、もうすぐ公開の『マン・オブ・スティール』にファオラ=ウル役で出演!どうやら、冷徹な悪役美女のようで、本作を観る限りでもかなり期待できそう。(マイケル・シャノン演じるゾッド将軍の手下(?)のようで、彼と共にインタビューに答える動画[その1その2その3その4その5、こういうの見ると改めて「プロモーションって大変」「インタビュアーって重要」って思う]があった。)



本作で監督を務めたピーター・フリント(Peter Flinth)の次回作は「Beatles」。原作は、ラーシュ・ソービエ・クリステンセンのベストセラー(1984)。ラーシュ・ソービエ・クリステンセンは、最近だと『孤島の王』の原案を担当。「Beatles」は、ビートルズに憧れる少年達を描いた作品のようだが、音楽はグネ・フルホルメン(2010年に解散したa-haのメンバーだった)が担当し、プロデューサーは『コン・ティキ』のヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリ!(彼らが監督するといった情報も見かけたので、もしかしたら当初はその予定だったものの、『コン・ティキ』の成功で『パイレーツ・オブ・カリビアン』新作の監督に抜擢され、監督がピーターに替わったのかなと想像) こちらは楽しみ!