2013年7月12日金曜日

世界遺産から外れるという選択

富士山が世界文化遺産に登録されて云々で、何かと話題にのぼる「世界遺産」の話。先日、クローズアップ現代を見ていたら(というか、オンデマンドで見たんだけどね)、興味深いエピソードが紹介されていた。

富士山は今回の世界文化遺産の認定に際して、いろいろな「目標」というか「規準」が示され、要は注文というか努力目標と引き換えに認定を戴けたような形になっているらしく、それらが遵守というか達成されないと、今後は登録抹消もあり得るよ・・・的な流れで紹介されたエピソード。

それは、ドイツ東部にあるドレスデン・エルベ渓谷

2004年に世界遺産に登録されたのだが、その翌年早くも登録抹消の危機に直面してしまう。それは、街の中心部と住宅地を結ぶ橋の建設計画が持ち上がり、世界遺産委員会から「橋を建設すれば(世界遺産としての認定に値する景観が損なわれるので)登録を抹消する」との警告を受けたのだ。

しかし、長年の慢性的な交通渋滞(とりわけ朝夕の通勤時)に悩まされ続けて来た住民にとって、街の中心部と住宅地を結ぶ橋の建設は周辺住民の悲願でもあった。そこで、建設の是非を巡って住民投票が行われることに。

結果は、67.92%が橋の建設に賛成。

橋の建設計画は住民投票を受けて続行され、ドレスデン・エルベ渓谷は登録からわずか5年で世界遺産のリストから除外されること。(背景は異なるものの、先日小平で行われた住民投票とは色んな点で、随分違った様相を感じたりもした。)

ただ、ドレスデンの市民は「橋の建設」を選んだというだけで、効用が歴史を駆逐することを是認したわけではなく、歴史的な建造物の補修工事は継続中。但し、「世界遺産の保全」として政府が拠出してくれることを見込んでいた8億円は取り消され、市民からの寄付などを中心に進められていることもあり、計画からは大幅な遅れが生じてはいるとのこと。