2013年11月24日日曜日

スウェーデン映画祭2013の注目作

洋画の興行不振と軌を同じくして(?)、映画祭の濫立に拍車がかかる近年。映画祭の季節は取捨選択と自問自答、そんな往復反復常住坐臥の嬉し恥ずかし悲しき性よ。

今年の11月から12月にかけての数週間は重なりすぎて「犠牲」とかの概念すら吹き飛ぶ感じ。ここまで来るとカラダもココロも一つでありがとう!などと天に感謝を始めてしまいそう(ただの「つよがり」とも呼ぶ)。

そんな中、今年から始まる(で合ってる?)スウェーデン映画祭。「トーキョーノーザンライツフェスティバル」からのスピンオフ(?)みたいだし、別に優先順位あげとかなくても好いかな、などとラインナップを気負いなく覗いてみると・・・

救済は忘れた頃にやってくる。劇場観賞を個人的に願って止まなかった『セッベ』が上映されるではないですか!!! ブログを始め、初めて劇場未公開作について記事を書いてみたのが、その『セッベ』。もう二年半以上まえのこと。この記事がそうなんだけど、物語全篇を追いながら書いているので、観賞予定の方は(もし読んで頂ける場合は)「途中まで」を参考にして頂ければと思います。

閲覧回数など僅少だし、検索して辿り着かれる方など極めて稀だったけど、ノーザンライツに勝手にラブコールしてみたりした甲斐がありました。(全然、無関係です、実際は。)

しかも、3回の上映のうち、2回には監督の舞台挨拶まである(追記:中止になったとのこと。残念・・・)というではないですか!必見!

監督のババク・ナジャフィは、『セッベ』の後に、ヨエル・キナマン主演で『イージー・マネー』の続編を撮っていたりするんだけど、そちらは未見なので、一作目と併せてWOWOWあたりで放映してくれないだろか。『イージー・マネー』一作目はダニエル・エスピノーサ(『デンジャラス・ラン』)が監督を務め、ザック・エフロン主演でのハリウッド・リメイクも決まったらしいし。(もしかしたら、ノーザンライツでの上映があったりする!?)

ついでに、ノーザンライツでの上映希望を勝手につぶやいとくと、個人的に大好きで大注目なヨアキム・トリアーとか紹介してください!今年9月に原宿VACANTで開催されてたイベント「ノルウェージャン・アウトレット」内で「Oslo, 31. august」の日本初上映があったと思うから(行けなかったけど・・・)、日本語字幕もあることだろうし、彼の処女作「Reprise」も絶対紹介しておいて損はない(というか、イベントにも後々箔が付くはず!)。と、今頃、しかもこんな片隅の片隅でつぶやいても意味ないけどね。最近はジャンルものやクラシックなんかも充実させてて興味深いイベントながら、作家性やや強めな新進気鋭監督作なんかの枠も設けて欲しいというのが個人的最重要望。

とりあえずスウェーデン映画祭2013は『セッベ』を上映してくれるとわかった日から、「通う」ことを心に誓ったことだし、なるべく観られるだけ観たいと思う。というわけで、今年もポーランド映画祭とは一切無縁で終わりそう。(だって、中国インディペンデント映画祭2013は絶対に見のがせないからね。本当に大充実な上に映画祭の神髄が宿ってる屈指の映画イベントだと思ってます。前回の感想などはこちら。)

2013年11月18日月曜日

スリー・モンキーズ(21日深夜放映)

先月の東京国際映画祭ではレハ・エルデム2本立という物好きコースに酩酊な夜を味わった映画ファンも少なくなかったことだろう。各国の映画祭で地道に長らく注目を集め続けるトルコ映画。ここ日本の映画祭においても地味ながら根強いファンを獲得して来ている気がする。東京国際映画祭でもSkipシティDシネマ映画祭でも新しいトルコ映画を見せてもらえるし。ただ、一般公開となるとやはりハードルは高く、一昨年のセミフ・カプランオール「ユスフ三部作」(2011年のマイ・ベスト)以来、劇場公開の念願成就はなかなか叶えられることがない。

現代トルコ映画において世界的評価を牽引してきたヌリ・ビルゲ・ジェイラン。カンヌ常連の彼(グランプリ2回、監督賞1回という高実績)は、東京国際映画祭やSkipシティDシネマ映画祭のコンペにも参加(及び受賞)経験があり、日本でも映画祭での作品上映は(コンペ以外でも)そこそこ恵まれてはいるものの、劇場公開作が一本もないのは残念でならない。確かに、作風としては劇場公開には圧倒的に不向きかもしれないが、明らかに「ならでは」の魅力をもつ彼の作品は、「出会う機会を与えてみて、まずはそれから」的アプローチも必要。革新や確信からはやや遠ざかり、核心も曖昧だったりする微かなドラマとドラマチック過ぎる冗長画力は、セミフ・カプランオールがユスフ三部作で見せた深遠なる自然の囁きとは一味も二味も違う、伝統と近代化における内部分裂的デカダンス。デジタル撮影という新たなパレットにより、ヌリ・ビルゲ・ジェイランは自らの世界を一刷毛にまで投影してる。

『昔々、アナトリアで』が一昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭オープニング作品として一回限り上映されたものの、その後は彼の作品を(劇場で)観る機会には恵まれなかったが、今夏にアンスティチュ・フランセ東京で開催された地中海映画祭2013で『五月の雲』を観られた喜びも束の間(?)、思いがけず今度はBSスカパー!で『スリー・モンキーズ』が放映されるという奇跡的幸福。しかも、ちゃんとHD画質。デジタル撮影ということもあってか、デジタル放送とも相性の好い「画」な気がしたり。シネスコなので、画面右上に表示される「見事な存在感」のロゴもうまく隠せば(といっても布とか掛けてという意味です)画を邪魔しない。DVDは持っていたけれど、こんな高画質で見せてもらえるとは今年のマイベスト放映かも。

当ブログでも何度か紹介してきた「スカパー!シネマアワー THE PRIZE」は本当に侮れない(どころか注目の)ラインナップで、そのくせボーッとしてるとついつい見逃してしまうという要注意枠。確か先日も(といっても何ヶ月も前だけど)エリア・スレイマンの『D.I.』とか放映してたりしたし。ただ、何故かこの枠は「オリジナル・タイトル」をつける癖(?)があり、『D.I.』も別のタイトルだった気が。おまけに、監督の表記とかもオリジナルだから、気づきにくかったりヒットしなかったりな事例も多数。DVDスルーの作品から放映されることもあれば、映画祭上映作品からの流用的ラインナップもあったり、いずれにしても自力ではHD画質で観られないものがHD画質で観られたりすることも結構あって(SD画質のこともあるけれど)、実に貴重な枠なのです。あのロゴさえなければもっと素敵なんだけど・・・。

『スリー・モンキーズ』(東京国際映画祭では上映されたんだよね、観てないけど・・・)の放映は、あと一回。21日木曜深夜。トルコ映画ファン、必見。

ちなみに、アンスティチュでの『五月の雲』上映は35mmだったんだけど、2000年の地中海映画祭(国際交流基金フォーラムで開かれてて、私もほんの数本だけど観に行った記憶が)で上映されたフィルムで上映されていた。そして、2000年以来上映される機会がほとんどなかったのだろうか、見事に鮮やかなプリントだった。ああいうフィルムを活かせる(そして、出会える)「場」がもっとあれば好いのになぁ、などと切に思ったりもした。