2013年5月22日水曜日

サマー~あの夏の記憶~

WOWOWのジャパン・プレミアにて日本初紹介となった2008年の作品(原題:Summer)。エンドロールを見ていると、ケン・ローチ作品のプロデューサーであるレベッカ・オブライエンの名を見つけ、終いには制作にSixteen Filmsが参加している事実まで。主演の二人が、ロバート・カーライル(『リフ・ラフ』『カルラの歌』)も、スティーヴ・エヴェッツ(『エリックを探して』)も、ケン・ローチの作品で主演を務めた俳優だったし、テイストもやや近いものをそこはかとなく感じながら観てたけど、どうりでね。

にしても、清々しいほど地味な小品で、WOWOWでの放映とはいえ、日本に紹介されたのが意外。これって、ロバート・カーライルが主演だったから?ケン・ローチ関連推しはしてないみたいだし。偉大なる、フル・モンティ。いや、トレインスポッティング・フォーエヴァーか。というより、あの頃のUKフィルムのゴキゲンさ(個人的にはそこまでもれなく好きなタイプの作品群ではないけれど)は日本でのミニシアター作品に一定のファッション性(しかも、親しみやすい)を与えてくれてもいたなぁ、なんてノスタルジー。

本作は、幼なじみの二人の男の「もつれた絆」を、現在と過去とを往来しながら描いてく。そして、最後にわだかまったきっかけの真相が明かされ・・・。ありがちなプロットながら、ストイックなまでに起伏を起伏にしようとせずに、昂揚に恬淡な澄まし顔で物語は進んでく。監督のケニー・グレナーンはテレビの仕事を多く手がけているようだし、映画となったら「より映画的」な語りにこだわったのかもしれないなどと勝手な憶測してみたり。

こういった映画の、劇場でまったりと観てこそな心地好い脱力で帰路につける不思議な贅沢感覚が懐かしい。渋谷のミニシアター(しかも、多少オシャレ感のあった・・・かつてのシネマライズ、シネアミューズ、シネセゾン渋谷のように)、真夏のレイトショーで観た帰り、腕にあたる生ぬるい風にヒンヤリ成分を一瞬感じたり・・・みたいな観賞体験を妄想してみたり。

エンドロールで流れてくるKing Creosote「Home In A Sentence」がもたらす清涼安堵感も、ありがち以外のなにものでもない「パターン」でありながら、愁傷をやさしく癒やす、ひだまりの詩。