2013年4月27日土曜日

イタリア映画祭2013 (1)

世間じゃ連休一日目。私は朝早うから、お仕事疾風怒濤お昼まで。何とか切り上げ、いざ有楽町。向かう車中じゃ転た寝上等。座り心地の悪さは折り紙付きの、有楽町朝日ホールで疲労と睡魔の昏睡観賞・・・。そんな幕開け情けない、今年のイタリア映画祭。

1本目は、『綱渡り(Gli equilibristi)』。オープニングから、まさに「綱渡り」しているかのように浮遊するカメラ。屋内を遊泳した後に、屋外へ出ると上空高くより真下を見下ろす眼差しは、まさに綱渡り。前を向いているうちには気づかぬし、気づかぬからこそ知らぬが仏。楽観こそは健全足許、悲観の兆しは踏み外しまでのカウントダウン。

上映後、イヴァーノ・デ・マッテオ監督は「綱渡りとはまさに、現代社会における我々のおかれた状況だ」と語っていた。「その下にはネット(社会福祉)があるから、一見落ちても大丈夫に思えるが、その網の目は実に粗く、その穴から更に奈落へ落ちぬとは限らない」

ドキュメンタリー畑で経験を積んできた監督らしい、折り目による作劇よりも流れについてくる展開。なかなか興味深い語り口ながら・・・そういった作風に前述の通りの疲弊で臨むとなると、当然無謀。いやはや、観る側もまさに「綱渡り」をしていた感じ。いつ(寝に)落ちるかわからぬスリリング。たとえ寝たとしてもスッキリしない朝日ホールの椅子クオリティ。朝日ホールじゃなきゃ、割り切った転た寝だって出来たかもしれないけれど、あの椅子で両隣にも人が居るとなると、転た寝すらままならない。


2本目は、『素晴らしき存在(Magnifica presenza)』。前作『あしたのパスタはアルデンテ』が日本でもスマッシュヒットとなった、フェルザン・オズペテク監督最新作。『ぼくたちの生活』ではカンヌで男優賞も受賞したエリオ・ジェルマーノが主演。序盤は場内も和やかな笑いにしばしば包まれて、背景を蔽ったベールがめくれてゆくにつれ、しっとりとして静寂に包まれる。モスクワ国際映画祭では観客賞を受賞しているらしく、なかなかポピュラリティも備わっていそう。が、しかし。個人的には乗り切れないまま終了。主人公の造形にいまいち入ってゆけず・・・と自覚していたつもりだが、正直物語を十分咀嚼できてる自信もない。やっぱり、今日は観賞に耐えうるコンディションじゃなかったのかも。それでなくとも、映画祭での観賞には通常より緊張感が強いられる(日頃、混み混みのなかで映画観ることほとんど皆無なもので)。おまけに、有楽町朝日ホールとなれば、身体的なコンディションも相当な状態が求められるというもので。


イタリア映画祭は、日本で数ある映画祭や特集上映のなかでも、私のなかではかなり上位に位置する優良映画祭。その主因は客層の穏やかさや上品さ、従って落ち着いてみられる雰囲気が約束されている。のはずだったのに、今日は1本目で、後ろの客にたびたび背もたれキックされるので、振り返ってみると、報復するかの如き強打をされるという悲劇に遭った。怒りというよりも、イタリア映画祭なのにこんな下卑た客が・・・という哀しみに。そんな寂しさが尾を引いたりもしてしまったのかも。

明日は気を取り直して、リスタート(リセット?)したいもの。

※そうそう、今年もやっぱりフィルム上映が基本みたい。今日の2本もフィルム上映。
    いまや稀少で貴重なフィルム上映を堪能できるのも、イタリア映画祭の醍醐味になっている。

※フィルム上映といえば、もうひとつ嬉しいニュース。
   イタリア映画祭会場に、ベロッキオの『眠れる美女』のチラシがあった。
   そして、チラシの作品情報欄には「35mm」の文字が!フィルムでの観賞が叶いそう!
   (昨年の東京国際映画祭では残念画質のデジタル上映。
     暗い場面が多く、フィルムで観てこそな作品。エスパース・サロウ、信用できる!)