2013年4月22日月曜日

GLORIOUS 39

WOWOWのジャパン・プレミア(日本劇場未公開作の初放送枠)で観た『ブラック・レコード~禁じられた記録~Glorious 39)』は、以前から秘かに観たかった一作でもあった。というのも、『ミスター・ノーバディ』で主役二人の思春期を演じたジュノー・テンプルとトニー・レグボが揃って本作に出演していると知ったからである。本作でその二人は、全く直接関わらない(そもそも二者が属する時代には70年の隔たりが)けれど、『ミスター・ノーバディ』での好演同様の存在感。ちなみに、この二人、『アバター』と『アリス・イン・ワンダーランド』のアート・ディレクションで二度のアカデミー賞に輝くロバート・ストロンバーグ初監督作「Maleficent」(実写版「眠れる森の美女」、姫がエル・ファニングで魔女がアンジェリーナ・ジョリー)にも揃って出演するらしい。

おそらく英国男子好きな映画ファン大興奮な贅キャスティング。ビル・ナイやクリストファー・リー、デイヴィッド・テナント(『ドクター・フー』10代目ドクター)といった超お馴染みの面々に、エディ・レッドメインがかなり重要な役どころ。しかも、エディは自慢の歌声を(一瞬ながら)披露。『レ・ミゼラブル』よりも美味しく聞こえる(『レ・ミゼラブル』では、録音のせいか、あまり巧く聞こえなかったが、本作における美声の格調は見事に上質)。

主演のロモーラ・ガライは難役ながら、的確な奮闘演技。作品自体が精巧に仕上がっていたら、女優としての評価を更に上げていた気もする。

序盤こそ、英国郊外の優雅な光景も手伝って魅了されそうな気配が漂うも、中盤にダレ始めると、後半の失速がハンパなく、トンデモ臭が立ち籠め始めた終盤には観ているこちらこそが拉致られ気分になってくる。いまやトム・フーパーの片腕的カメラマンであるダニー・コーエンの撮影も、最初のうちには「映画的!」なシネスコ使いに胸高鳴るも、トム作品同様「あざとさ」が続きすぎれば胃もたれ状態。エイドリアン・ジョンソンのスコアも大仰さだけで押し切る単調さにやっぱり胃もたれ。テレビ畑での仕事が長いエディターは、映画的緩急つけきれず。

アメリカでも劇場未公開に終わったようで、劇場公開はイギリスとアイルランドだけのよう。納得。