最近気づくとよく選んでしまうのが、Josh Ritterの新作「The Beast In Its Tracks」。
もとも知っていたわけでもないし、男性SSWが以前から特に好きだったりするわけでもなく、そもそも自分がピアノから音楽に入ったこともあってギター系には多少の羨望と根本的な嫉妬があって複雑な(?)僻み根性が知らぬうちに根を下ろしがち。ところが最近、年のせいか、むしろ自分史の周縁にこそ愛情を注ぎたい衝動が自然とわいてくる。二週間だけギターを握り、驚異の成長(自称)で弾き語ってみせるも、生来の小さな掌と習得済鍵盤(といってもテキトーで鈍な腕だけど)への逃げからあっけなく逃亡したという暗い過去を払拭すべく、ギターそのものは手にせぬかわりにギターから紡がれる物語に静かに耳を傾けたい昨今。
アルバム全体を愛する、というかアルバム全体で語られる世界に寄り添おうとすることもできぬ、単発で楽曲の摘まみ食いに興ずることしかできなかった稚拙なリスナーから卒業したいという積年の課題。今年は何とか幾許かはクリアできるかな。
この「The Beast In Its Tracks」もアルバム全体で一つの流れが静かな緩急をもちながら、あくまで中心となる歌とギターに、必要よりは些か「プラス・アルファ」気味にスパイスされて、耳に適度な安らぎと心地好い遊びを届けてくれる。
新作しか聴いたことがないのだが、旧作へも近いうち辿ってゆきたい気持ち。
ミュージック・ビデオを見てみても、シンプルながらも滋味なる絵心を感じたり。
この曲は、エミルー・ハリスとのセッション動画もyoutubeにアップされていたりする。
次のモノクロによるシンプルなビデオも味わい深い。
そして、さりげなくも凝りに凝った愛らしいビデオが音の愛らしい美しさと見事に調和。
そうだ。彼の音楽の「手触り」とはまさに紙のそれなんだ。ちょっとザラザラだけど心地好い、それ。