2013年4月1日月曜日

三度目の「Bonjour!」

 今日から4月。新年度。暦の上でも、実際の天候的にも、春は到来してはいたものの、半分冬眠気味に愚図っていた自分に突きつけられる出発の日。しかし、4月1日という響きは、1月1日とはどこか違った期待と不安が、まさに「蠢く」ようにときめきを連れて来る気がします。

 4月に向けての心構えや迎え方、4月の始め方も人それぞれと思います。自分の今が好きになれずに離れる(遠ざける)ことばかりにひたすら執心していた思春期には、とにかく自分を大きく変革する好機のような気がしてました。学校に通っている頃であれば、クラス替えや授業が変わり、周囲の環境の変化を口実に自らのキャラクターを造形し直すことが可能な気がしたからです。そうした変身願望は、年齢を重ねると共に薄れはしたものの、いまだに何処かにくすぶっているものです。おそらく、そうした「薄れ」にしても、自分が抱えている今(つまり、過去に根をもち、そこから自然に育った結果)からは所詮離れることなど出来ぬという現実への諦念がもたらした作用に過ぎないのかもしれません。

 そんな変身願望の、ささやかな現実的(実利的?)抵抗として、自分のなかで新年度恒例の試みがあります。それは、新しい言語習得を夢見ることです。4月開講のラジオ講座なりテレビ講座なりのテキストを数冊、購入するのです。ただ、数ヶ月と続いた試しはありません。テキスト購入のみで、一度も聴かずに終わることも珍しくないのが実際です。しかし、例外なく「今年こそは」という(自分なりの)強い決意が時折瞬発的に燃え上がりつつ4月を迎える、ここ数年。

 当然、今年も「今年こそは」な始まりを迎えた訳です。今年はフランス語とイタリア語をかじってみたいと思っています。フランス語を学ぼうとするのは三度目です。大学時代に「第三外国語」として履修登録しましたが、途中で出席しなくなってしまいました。映画に興味をもつ前の話で、フランス映画など数本観たか観ないか程度の頃。私の通っている大学では、文系学部の学生であるにも関わらず理系科目の必修枠があり、その代替科目として第二外国語の応用科目か第三外国語の科目を履修することが認められていた為に、その為だけに履修をしたのですが、他に多数登録していた(当時、登録は無制限)「保険」の科目で容易く目処がたってしまった為に「切る」という実につまらないdie学生的発想に堕してしまったものでした。

 そして、数年前。折角、英語圏以外の映画もしばしば観たりするのだから、少しくらいその言語がわかったら、観賞における体験はより豊かなものになるのではないだろうか。などという実に聞こえの好い大義名分を掲げつつ、フランス語のラジオ講座を聴き始めてみたものの、習慣は定着しないまま、梅雨入りを待たずにテキスト購入すらしない状況に。ラジオで聴く(つまり、リアルタイムで追いかける)ことが困難だった為、Web上で一週遅れでアップされるものを聴くようにしていたのですが、そうするとそれが更新される直前に一週間分まとめて聴くという、中高一貫一夜漬け体質をなぞるような学習しかできぬ情けなさ。そして、それも、一箇所でもできた綻び(完遂できずに生じた部分)を理由に「潔く」退却するという我が旧弊で幕を閉じる結果になったのです。

 今年。NHKラジオはネットでも聴くことができるようになりました。いわゆる「radiko」のようなものです。自宅に居ずとも、ラジオを携帯しておらずとも、聴くことが出来るようになったのです。そして、それはより「リアルタイムで聴く」ことを可能にしてくれる気がします。「毎日」ということこそが大切なのだと(頭では)わかっている自分にとって(講座のタイトルも「まいにち〇〇語」ですし)、それを心にしみる程度まで習慣化してみたいという長年の悲願をいよいよ叶える時が来たように思います。しかし、メディアやツールの利便性向上が必ずしも人間のキャパシティ拡張に直結するとは限らないというのは現実(いや、真実、いや、当然)で、制限の解除は強制力の除去として、より強い主体性が求められる状況を生むことでしょう。だからこそ、より強い決意とより定着させた習慣を保持し続けぬ限り、完遂などいよいよ夢の又夢の話になるような気もしています。

 現に初日から朝の放送を聞き逃し(というより起床できぬという為体)、再放送に何とか「飛び乗る」という有様。身体にしみついた夜型体質を朝型に変えるという悲願成就も、実はこのプロジェクトに託されている以上、何としても降りられない。降りたくない。

 調子に乗ってイタリア語講座(まいにちイタリア語)も聴こうと思っていたのですが、期せずして個人的興味鷲掴みの内容が「応用編(木・金曜)」に。イタリア映画祭などでもお馴染みの岡本太郎氏が講師を務める「スクリーンが映し出すイタリアの現在」。今月取りあげる映画は、『ブルーノのしあわせガイド』、『ゴモラ』、『海と大陸』、『ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-』の4本。『ゴモラ』以外は昨年のイタリア映画祭で上映され、いずれも現在公開中(あるいは、もうすぐ公開される)作品。私は既に4本とも観賞済みですが、いずれもがイタリア文化の特色をそれぞれ見事に浮き彫りにしている作品で、とりわけ『ゴモラ』と『海と大陸』は個人的にもかなり思い入れの強い作品。この応用編を存分に享受するためだけにでも、「入門編(月曜~水曜)」を真面目に聞き続けたいと思います。好きこそものの上手なれ。