2013年4月16日火曜日

トマス・ヴィンターベア EN MAND KOMMER HJEM

『偽りなき者』絶賛公開中のトマス・ヴィンターベア監督作で日本未公開作。ハリウッドへ渡って『アンビリーバブル(It's All About Love)』撮るもパッとせず、盟友ラース・フォン・トリアーによる脚本で『ディア・ウェンディ』撮るも何処か迷走気味だった彼が、デンマークに戻って撮った本作。そのタイトルもまさに、「When A Man Comes Home」。



この予告からして、明らかに『セレブレーション』や近作のトマス・ヴィンターベア監督作とは全く趣の異なった映画であることは明らか。本篇も冒頭からいきなりショスタコーヴィチの『ジャズ組曲第2番』のワルツが流れてくる。同曲は本篇で度々流される。しかも、舞台となるのは寂寞漂う寒色風景ではなく、暖かな光溢るる黄金色の牧歌的郊外。『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーも受賞した盟友アンソニー・ダッド・マントルによる撮影も従来の臨場感とは些か無縁な流麗さ。

主人公セバスチャンは、幼い頃に父親が自殺。母親は女性と結婚。彼は吃音になってしまう。

そんな彼の父親、実は死んではおらず、有名なオペラ歌手になっていて、街の「セレブレーション」のためにやって来る。母親から真相を聞かされたセバスチャンは、自身が厨房で働くホテルに宿泊している父親と「交流」の機会を得る。

このあたり(冒頭30分過ぎ)までは実に「爽やか」「ほのぼの」な空気も漂っているのだが、後半にさしかかってくると、トマス・ヴィンターベア作品らしい(?)アイロニカルな展開が待っている。

観ながらふと思った。本作は「父と息子」の物語が中心にあるわけだが、本作の後に撮った2本(『光のほうへ』『偽りなき者』)においてもそれは引き継がれてる。そう考えると、「父と息子」三部作とか呼びたくなりもするけれど、3作をまとめて捉えるのはさすがに無理があるほど本作はやっぱり明るくて、笑いも辛辣も適度というより半端な印象。ただ、リラックスしながらリハビリしてる本作は、主人公セバスチャンの自分探し的キャラクターとトマス自身が優しくシンクロしている感じ。

オペラ歌手の父親を演じるのは、先日のブログでも取りあげたトマス・ボー・ラーセン。主人公セバスチャンを演じた俳優は、IMDbによると本作しか出演情報がないが、新人?素人?

輸入盤DVDで観たのだが、珍しく(?)本篇以外に何の特典も入っていなかった。ちなみに、DVDのジャンル表記は「コメディ」。