2013年8月1日木曜日

執行者/The Excutioner

2009年の韓国映画。「韓国映画ショーケース2009」で上映された作品が、今年1月にDVDで発売。私は先日、WOWOW放映で観た。同ショーケースでは、『素晴らしい一日』や『昼間から呑む』など劇場公開がその後決まった作品も上映されていたが、本作は残念ながら劇場公開には至らなかった模様。実際に観てみるとそれも納得だったりもするのだが。

監督は本作が初長編となるチェ・ジンホ。主演は、ユン・ゲサン(アイドルグループgodの元メンバーで、『プンサンケ』で主演)、チョ・ジェヒョン(キム・ギドク初期作の常連)というキム・ギドクに縁のある二人であり、かつテーマも重厚であるはずながら、本作の仕上がりは至って生ぬるく感傷的。

韓国では死刑制度が存続してはいながらも、1997年12月に23人が執行されたのを最後に、刑の執行は行われてないらしい。そうした事実を背景として、「12年ぶりに死刑が執行される」というフィクションから死刑制度を問う物語をうみだした。とはいえ、制度に対する疑念から社会機構への「信頼」を揺さぶろうとするというよりは、タイトルにあるように「執行する者」が人間として個人として味わう葛藤を主軸に「ドラマ」が展開される。懐疑と諦念の彼方に佇むベテラン、職務遂行と遵守への過剰な使命感に浸る中堅、臆病から倨傲そして陶酔へと変容する新人、そうした三人の刑務官と彼らの背景を職務と絡ませつつ、クライマックスの〈執行〉へ感情が収束してゆく構成だ。

新人刑務官(ユン・ゲサン)は公務員試験の受験を控えた恋人がいるのだが、彼女から妊娠を告げられる。もうすぐクリスマス。そのまえには死刑の執行が・・・。命の出入り、降誕、昇天、いくつもの生と死のドラマを交錯させようとしたシナリオ。成功していれば極めて深遠さをたたえた映画に仕上がっていただろうが、各要素は見事に編まれる事なく、羅列的確認で進行してしまう残念。

技巧と情緒の堅固な結託に「鷲掴み」を余儀なくされる韓国映画の数々。一時期の粗製濫造から見事に復調の兆し(どころか隆盛!?)を感じる昨今。本作が少し前の作品だからか、それとも劇場公開作と未公開作に実は明確な落差があるからか、ここ最近観た韓国映画の濃密と堪能からは程遠い手緩さにガッカリしながらも半ば安堵(?)。韓国映画にも、(日本映画と同様に)メロドラマ的センチメンタリズムに堕してしまう傾向ってあるんだな、という。ただ、そういった「つくり」(とりわけ、エモーショナルなスコアや心情吐露的な台詞に顕著)は基本失意に流れてしまいがちながら、時折直球過ぎてよけられないままグッと来てしまう場面もあったりする。ただ、複雑な問題に挑みつつも、不都合な議論を回避する用意がなされているかのような半端な蛇行はやはり、初志を懐疑せざるを得ない結果に陥ってしまっている気がしてしまう。同じ傾向は邦題にも引き継がれてしまったのかも。(『死刑執行人』でよいではないか)