2013年8月10日土曜日

パシフィック・リム

いつもは澄まし顔でスカしたこと書いてるくせに、実際はこの手の祭りに浮かれてしまう。「東映まんがまつり」に興奮してた男子なメンタル健在。三つ子の魂百まで(仮)。

休みなのをいいことに、朝一の回と昼下がりの回を早々に予約してしまっている自分に戸惑うくらい。あれ、俺ってこの手の映画に事前からこんなにも興奮するタイプだったっけ?ってね。でも、よくよく考えると、文学的(と呼べるかどうかは別として)にも芸術的にも(つまり文芸的な)ルーツのすべては幼少期に好んで見たアニメや漫画にあるような気がしてしまう。なかでも意識的自覚的にコミットし始めた漫画(『キン肉マン』『キャプテン翼』『ドラゴンボール』など)以前の、鮮明には思い出せないながら確実に洗礼を受けているであろう自覚のある戦隊ものやロボものは、有無も言わさずに血となり肉となったような気さえする。そんな影響のせいか、この手の作品の公開に際しては、抗いがたい胸の高鳴りを覚えてしまう。アメコミ物に何だかんだ吸い寄せられるのも同様な所以だろう。

本作をIMAX3Dで観賞することは絶対必須だと心に決めていた。一方、3Dを字幕で観るのが本当に苦手な自分にとって3Dは吹替で観ることが必定。となれば、(2回のうち)1回は2D字幕!のはずを、ちょっとミスって2D吹替で観てしまい、今日は結局2回とも吹替版。特に目当ての役者がいたわけでもなかったので、気が緩んでました(笑)まさか菊地凛子も非本人吹替とは知らず・・・。とはいえ、菊地凛子が演じる森マコの吹替は綾波レイでおなじみの(とか言いながらギレルモ同様(笑)ヱヴァには詳しくありません)林原めぐみ。他にも、「アムロ・レイ」の古谷徹(メカに乗る役ではないですが)と「シャア・アズナブル」の池田秀一が共に吹替キャストにいたり(二人とも60歳代というのに声の艶やかなこと・・・声優ってすごいね)、「上杉達也」の三ツ矢雄二が最近のキャラにもやや通ずる役どころで出ていたり。玄田哲章や浪川大輔といった俺でも知っている名前(海外ドラマの吹替なんかも多くやってるからね)もあって、サービス精神旺盛&豪華&堅実な吹替版に仕上がっている(と思う)。パンフも吹替関連記事を載せてくれても好かったのに。あ、でも、パンフはそこそこ「頑張ってる(©『桐島』前田涼也)」ほうです。

以前は3D上映があるなら絶対3Dで観る方針だった俺だけど、最近では2D観賞で済ますことも増えてきた。理由としては、「3D効果(演出)がマンネリ気味」「3Dの字幕版が個人的にはNGながら、キャストによっては絶対字幕版が好い場合もある」「画面が暗くなったり小さく感じたりする」等が挙げられる。気に入ることがそもそも目に見えてたり、観た結果気に入ったりすると、仕様を変えてリピート観賞してしまったりもするけれど(思うツボ)、とはいえ基本的に食傷傾向にある3D上映。そんな俺が今回、同じ作品で2Dと3Dを同日観賞した結論。本作は断然3Dがオススメ!但し、IMAX版に限る・・・かもしれない。

2D版でも全然堪能できると思うし、2D版ならではの楽しみ方もあるとは思うけど、何せ本作のバトルは大半が夜の場面。つまり、全体的に暗い。ならば、3Dなら更に見えづらくなるだろう・・・って?確かに。ただ、2D版とIMAX3Dを見較べただけだと、後者が断然見やすかったのだ。全体的に暗い(黒い)画面のなかで、少しでも3D加工が施されることによって画面内の動きが見えやすくなったのではないかと推測。何しろ、ギレルモ・デル・トロによれば、最初から3Dで制作した場面が45分程度あるらしいので、そういったことも「見やすさ」には貢献してるかも。但し、対戦シーンにおける場面転換は激しいし、寄り過ぎ(私見)な画で展開する時間も多めなので、スクリーン全体を或る程度余裕をもって見渡せる位置が好いのではないかな、とは思う。「いつも」よりやや後ろ、くらいが丁度好いかと。まぁ、そのあたりは好みかな。IMAXではない通常の3Dだと、もしかしたら暗さが増して見にくい(見づらい)ってこともあるかもしれません。

などとミッションコンプリートに浮かれ気分でいるようですが、実は個人的には心置きなく存分に楽しめたって感じでもなかったんですよね・・・

そのあたりの原因というか背景みたいなもの(あくまで私的な)を確かめるうえで、キネマ旬報に掲載されていた三池敏夫氏と佛田洋氏の対談が大いに役立った。(前半は『パシフィック~』を巡っての感想が中心だけど、後半はほとんど日本の特撮に関するこれまでの流れと現在の趨勢に関する話題が中心。その手の情報に詳しい人にとっては目新しい内容はないかもしれないけれど、その方面に明るくない自分にとっては「わかりやすい」と同時に面白く読める内容だった。ちなみに、ギレルモ[キネ旬は「キジェルモ」表記]のインタビュー記事も好かった。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)への敬意なんかは読んでいて胸を打たれた。)まぁ、その辺に関する感想はまた次の機会にでも。(あるかわからないけど)

最後にこじつけ的感慨。放射能や原子力が当然(?)出てくる本作が、長崎に原爆が投下された8月9日公開となったという奇遇。勿論、本作における原子力は「平和利用」されている訳ですが、だからといってハリウッド映画にありがちな蒙昧描写だけでもない。ちゃんと被爆だってしてるし、(『ゴジラ』へのオマージュとして?)「KAIJU(怪獣)」が出現した理由も人間による自然環境の破壊にある。おまけに、冒頭で「命の壁」が怪獣によって容易く破壊される映像は、多くの日本人にとってスーパー堤防の無力さ(文明の卑小さ)を想起させるに違いない。勿論、そうした観点から本作を眺めれば、粗も疑問も浮かんでくるが、それでも単純なだけで終わらせまいとする気概は伝わってくる。そんなこと考えながら観る映画でないことは重々承知(って言う場合は、大概実質不承知・・・)しているが、もしかしたらタイトル(とりわけ「パシフィック」)には平和への祈りも込められているのかも(「pacific」はそもそも「平和にする」の意)。