2013年6月16日日曜日

アラン・コルノーの遺作

4月から数年ぶりに仕事の内容(というかパターン)がガラッと変わり、休日まで5年ぶりに変わって、とても映画観に行ったりする余裕は皆無・・・かとも思っていたら、習慣を維持する意地くらいは残せるペース配分で日々過ごし・・・劇場へもそこそこ通っているし、映画祭や特集上映への巡礼も適度に敢行継続中。とはいえ、それらを反芻したりする余裕はさすがになくて、記事化できる体力能力恒常不足。
 
爆音映画祭の疲れ(と言っても、観に行ってるだけだけど)も抜けぬまま、秘かに(別に隠されちゃいないけど)始まっていた「EUフィルムデーズ」にも遅れて細々参戦。今週末からはフランス映画祭。特集上映や小規模映画祭の尋常じゃない日程重複っぷりはまだまだ続きそう。

そんななか、気軽に感想書ける映画をWOWOWで。『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れてCrime d'amour)』。今年のフランス映画祭での来日も控えているリュディヴィーヌ・サニエ主演。サニエ演じるイザベルが、自らの手柄を横取りする傲慢な女上司クリスティーヌ(クリスティン・スコット・トーマス)に復讐。イザベルによる殺害計画には、完全犯罪へと導く綿密な計画があった・・・。

本作最大の見どころ(?)は、昨年のヴェネツィア国際映画祭のコンペにも出品されたブライアン・デ・パルマ最新作「パッション(Passion)」のオリジナルであるという点(のみ)。そのリメイク版では、サニエ演じるヒロインをノオミ・ラパスが、上司のクリスティーヌをレイチェル・マクアダムスが演じている。洩れ聞こえてくる評判というか噂では、とにかくその二人の「からみ」の妖艶さばかりが注目されていた気がするが、オリジナルの『ラブ・クライム』には、それっぽい感情が仄めかされたりするものの、直接的な描写は皆無。(むしろ、その中途半端感の消化不良っぷりは最後まで拭いきれないハンパ臭となって残り続けてる。)きっと、デ・パルマが好き放題に「料理」してくれていることでしょう。みんな大好き大好物仕立てで!(撮影を、アルモドバルの盟友ホセ・ルイス・アルカイネが担当しているというのも興味深い!アルカイネはエリセの『エル・スール』も撮ってたりする。)

ところで、何の変哲もなく何の情熱も感じない、土ワイ的まったりと火サス的通俗っぷりは「ながら見」オッケーな手軽さで気軽で好いが、本作がアラン・コルノーの遺作と聞くと些か複雑。クリスティン・スコット・トーマスはほとんどアルバイト、リュディヴィーヌ・サニエはいろんな演技の練習台。皆が皆、やっつけ気味に仕事した(よく言えば肩の力が抜けた)一作という趣なので。だから、「デ・パルマによるリメイク」というのはせめてもの泊付けになったかも。

アラン・コルノー監督作では、シルヴィー・テスチュがセザール賞を獲得した『畏れ慄いて』(フランス映画祭では上映されるも、劇場未公開&未ソフト化)を是非観てみたい。日本(の会社社会)を随分と皮肉っている内容らしいのだが、そうした作品を撮ったこともあってか、元来興味関心が高かったのか、『ラブ・クライム』にも唐突に日本の企業からやってきた日本人が登場したりする。「日本人はすぐに記念撮影したがる」的な指摘の直後、バカっぽい日本のサラリーマンがイザベル&クリスティーヌとニヤニヤしながら写真を撮る場面。更に、スコア(というよりBGMというか効果音というか)では、日本風(?)な琴の音が頻繁登場。オフィスに盆栽でもあれば完璧だったのに。