2013年6月17日月曜日

第6回 爆音映画祭

今年は6月の第1週に早期&凝縮開催された、爆音映画祭。(映画祭はじめ爆音上映を主催している)boid主宰の樋口氏が語っていたように、今年はまさに「趣味」に走ったラインナップであり、それは即ち「豪華」でありながらもマニアックな贅の尽くし方。地元開催ということもあり、ふらっと足を運ばせられる(はずの)バウスシアター。ただ、今年の日程は個人的な(というか主に仕事の)日程と相性が悪く、前売券購入で観られぬものもあったりした。

とはいえ、マイケル・チミノ特集では『ディアハンター』以外は観られて大満足(『ディアハンター』は日程的に困難だったし、昨年「午前十時」での好環境観賞が叶ったばかりだから素直にあきらめた)。『天国の門(デジタル修復完全版)』は今秋にシネマート新宿での公開も決まったらしいが、「ジャパン・プレミア上映」という看板に点った緊迫感は、同作の観賞には打ってつけの酩酊増進剤。『サンダーボルト』のボッロボロフィルムが放つ経年浪漫は、複製技術にも刻まれし「いまここ」が皆無へと向かう現在を相対化。ミッキー・ローク主演の『逃亡者』なんて怪作を、わざわざ本国からフィルム取り寄せて字幕をつけてまで上映する「どこまでも善良な気狂い」映画祭にはただただ感嘆、笑うしかない。

爆音映画祭は、今まで劇場観賞の機会に巡り会えずに見逃して来た作品との幸福な出会いの場としても重宝してる。今年で言えば『ゴダールのリア王』や『スキャナーズ』。フィルム上映が嬉しい前者、努力すればブルーレイ上映もかなり美しくなる実感の後者。いずれも暴力的な音が嬉々として響いて渡る狂宴ぶり。『千年女優』も恥ずかしながら初見だったりして。普段囲まれることのないタイプの客層に入り交じり、終了後の劇場内が奇妙な感動の渦につつまれている空気を吸えるという新鮮。

昨今のお気に入りコレクションが爆音ラインナップに組み込まれる幸せを噛み締めるというのも、もう一つの楽しみで、『わたしたちの宣戦布告』(これは入ると思ってた)や『4:44 地球最期の日』(爆音ソクーロフ的系譜:不在の存在感)、『湖畔の2年間』(爆音向き!と思っていたが、まさか今年観られるとは!)などは何度目かの再発見といった鉄板。

他にも、『キャリー』や『悪魔のいけにえ2』、『先祖になる』なども観賞したが、今年の個人的最優秀爆音作品は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』だった。作中に溢れかえる音と狂気が、爆音で磨きがかかり、完全に観てる側までトランス状態。まさに「生まれ変わった」瞬間が連発される爆音最適傑出上映だったと思う。

『Playback』も爆音で観てみたかったし(日程的に不可能だった)、『フルスタリョフ、車を!』や『ラルジャン』は前売買ってのに仕事で行けずじまい。ま、今年のテーマは「一期一会もケ・セラ・セラ」(ただいま、決定)。会うもドラマ、会えぬもドラマ。


ところで、爆音映画祭初日(5月31日金曜)は銀座テアトルシネマの営業最終日だった。爆音映画祭のオープニング作品であった『天国の門』は奇しくも、銀座テアトルシネマが入っている銀座テアトルビルができる前にあった映画館「テアトル東京」で上映された最後の作品。銀座テアトルシネマ最後のロードショー作品が『使の分け前』というのも、天の思し召し!?