2013年11月18日月曜日

スリー・モンキーズ(21日深夜放映)

先月の東京国際映画祭ではレハ・エルデム2本立という物好きコースに酩酊な夜を味わった映画ファンも少なくなかったことだろう。各国の映画祭で地道に長らく注目を集め続けるトルコ映画。ここ日本の映画祭においても地味ながら根強いファンを獲得して来ている気がする。東京国際映画祭でもSkipシティDシネマ映画祭でも新しいトルコ映画を見せてもらえるし。ただ、一般公開となるとやはりハードルは高く、一昨年のセミフ・カプランオール「ユスフ三部作」(2011年のマイ・ベスト)以来、劇場公開の念願成就はなかなか叶えられることがない。

現代トルコ映画において世界的評価を牽引してきたヌリ・ビルゲ・ジェイラン。カンヌ常連の彼(グランプリ2回、監督賞1回という高実績)は、東京国際映画祭やSkipシティDシネマ映画祭のコンペにも参加(及び受賞)経験があり、日本でも映画祭での作品上映は(コンペ以外でも)そこそこ恵まれてはいるものの、劇場公開作が一本もないのは残念でならない。確かに、作風としては劇場公開には圧倒的に不向きかもしれないが、明らかに「ならでは」の魅力をもつ彼の作品は、「出会う機会を与えてみて、まずはそれから」的アプローチも必要。革新や確信からはやや遠ざかり、核心も曖昧だったりする微かなドラマとドラマチック過ぎる冗長画力は、セミフ・カプランオールがユスフ三部作で見せた深遠なる自然の囁きとは一味も二味も違う、伝統と近代化における内部分裂的デカダンス。デジタル撮影という新たなパレットにより、ヌリ・ビルゲ・ジェイランは自らの世界を一刷毛にまで投影してる。

『昔々、アナトリアで』が一昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭オープニング作品として一回限り上映されたものの、その後は彼の作品を(劇場で)観る機会には恵まれなかったが、今夏にアンスティチュ・フランセ東京で開催された地中海映画祭2013で『五月の雲』を観られた喜びも束の間(?)、思いがけず今度はBSスカパー!で『スリー・モンキーズ』が放映されるという奇跡的幸福。しかも、ちゃんとHD画質。デジタル撮影ということもあってか、デジタル放送とも相性の好い「画」な気がしたり。シネスコなので、画面右上に表示される「見事な存在感」のロゴもうまく隠せば(といっても布とか掛けてという意味です)画を邪魔しない。DVDは持っていたけれど、こんな高画質で見せてもらえるとは今年のマイベスト放映かも。

当ブログでも何度か紹介してきた「スカパー!シネマアワー THE PRIZE」は本当に侮れない(どころか注目の)ラインナップで、そのくせボーッとしてるとついつい見逃してしまうという要注意枠。確か先日も(といっても何ヶ月も前だけど)エリア・スレイマンの『D.I.』とか放映してたりしたし。ただ、何故かこの枠は「オリジナル・タイトル」をつける癖(?)があり、『D.I.』も別のタイトルだった気が。おまけに、監督の表記とかもオリジナルだから、気づきにくかったりヒットしなかったりな事例も多数。DVDスルーの作品から放映されることもあれば、映画祭上映作品からの流用的ラインナップもあったり、いずれにしても自力ではHD画質で観られないものがHD画質で観られたりすることも結構あって(SD画質のこともあるけれど)、実に貴重な枠なのです。あのロゴさえなければもっと素敵なんだけど・・・。

『スリー・モンキーズ』(東京国際映画祭では上映されたんだよね、観てないけど・・・)の放映は、あと一回。21日木曜深夜。トルコ映画ファン、必見。

ちなみに、アンスティチュでの『五月の雲』上映は35mmだったんだけど、2000年の地中海映画祭(国際交流基金フォーラムで開かれてて、私もほんの数本だけど観に行った記憶が)で上映されたフィルムで上映されていた。そして、2000年以来上映される機会がほとんどなかったのだろうか、見事に鮮やかなプリントだった。ああいうフィルムを活かせる(そして、出会える)「場」がもっとあれば好いのになぁ、などと切に思ったりもした。